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初秋の蔵王へ紅葉ドライブ。
上質で優雅な、温泉リゾートステイ。
2013年10月某日
先の旅で、すっかり山形蔵王温泉の魅力にハマってしまった友人と私(詳細はこちらのブログを参照)。あれ以来、現地の情報収集に余念のない彼女に「山頂の紅葉が、始まったらしいよ」と、急かされ、ガマンしきれずおんな二人、再び山形蔵王行きを決行(笑)。
みるみる暮れてゆく日の短さに驚きつつ向かう道中、見晴らしポイントの樹氷橋で車を停め、空を茜色に染める壮大な夕陽に思わず、うっとり。
今夜のお宿は、街の喧噪から少し離れた場所にある「蔵王四季のホテル」。前回、お世話になった「おおみや旅館」の姉妹館だ。その名のとおり、山に寄り添う緑豊かな環境に包まれ、ゆるやかな孤を描いて佇む建物は、リゾート度も満点!「オシャレだね〜」と、友人とふたり、期待に胸を躍らせる。
どこか北欧テイストを思わせるシンプルでシックな館内は、建物全体がアーチを描いているせいか、曲線が多く優雅な雰囲気だ。山に面したロビーラウンジからは、窓の外に四季折々の森の景色も広がる。リッチな気分のなか、スマートな応対で案内されたお部屋にまたまたビックリ!なんと最上階(!)の絶景和室だった。窓の外には遠く横倉岳が横たわり、眼下には「鴫の谷地沼」の美しい景色も…。嬉しいサプライズに、ふたりで大興奮。「おおみや旅館」同様、女性限定の色浴衣が選べるサービスや、ウェルカムフルーツも用意され、そのおもてなしクオリティにも感激。着替えたばかりの色浴衣で「早速、行っちゃう?」と、おどける友人に、阿吽のOKサイン。いざ、お楽しみのお風呂へ。
今回、このホテルを選んだ理由のひとつが、口コミでも人気の「離れ湯 百八歩」だ。実はホテル内にも大浴場はあるが、硫黄泉が肌に合わないひとのために、肌にやさしい弱アルカリミネラル泉だという。前回体験した、蔵王のあの“湯力”を、源泉掛け流しで楽しみたいなら離れ湯へ、という気遣いらしい。その日の気分や体調に応じ、双方楽しめるのも、ちょっとした贅沢だ。
ちなみにホテル宿泊者は、姉妹館である「蔵王おおみや旅館」と「蔵王国際ホテル」の入浴も、自由に行き来できる。さらにフロントにお願いすれば、温泉街にある3つの共同浴場の無料券もいただけるらしい。まさに、温泉好きにはたまらないサービスだ。
目的の「離れ湯 百八歩」はその名のとおり、ホテルを一度出て、カラコロと下駄を響かせながら百歩ほど(約1分)歩いた先にあった。平成25年6月にリニューアルしたという浴場は、二つの内湯と露天風呂、足湯を備えた入浴専用施設だ。
モダンな外観と対照的に、建物内は天井から壁、梁、窓の桟にいたるまで総木造りの美しい造作。入口を入ったすぐ正面は、景色を望む広い足湯もある。ヒバの香り漂う浴槽は少し青みがかった乳白色の湯をたたえ、硫黄の香りで私たちを歓迎してくれた。「おおみや旅館」の姉妹館らしく、湯船の造りは少し似ている雰囲気だが、ここの圧巻は何といっても、大きな窓の外に広がる、蔵王の眺望だろう。岩露天風呂からの解放感はさらに壮大。ちょうど先客が上がったタイミングも手伝い「この景色、二人占めだよ〜」と、友人も大感動の様子。とろりと肌に吸い付く絶品温泉を、広大な秋の空の下でまるごと楽しむ至福。声にならないため息がもれる。
再びホテルに戻る頃には日もとっぷり暮れ、空には星々の煌めき。篝火に浮かび上がるホテルを見上げながら「この距離感も、プチトリップね」と、笑う彼女に私も同感だ。
レストランでいただく夕食は、地元食材や郷土料理にこだわった“地産美味”の旬尽くし。食事をサーブしてくれるスタッフも気さくに、お料理の質問に答えてくれる。食用菊の国内シェアは山形がダントツで、今夜の前菜の食用菊“もってのほか”も、旬が始まったと伺い、箸を持つ友人の顔も興味津々(笑)。お造りには、山のホテルらしい、虹ます麹漬けも並び、酒党の彼女も嬉々顔(笑)だ。蔵王山麓で化学飼料を使わず育てられた蔵王牛の濃厚な旨みが楽しめる陶板焼きや、山形の郷土料理など、私たち同様、他県からいらっしゃるお客様に特にお料理は好評だという。果物王国の山形らしい、最後まで手を抜かない手づくりデザートも、その心意気ごと完食(笑)し、心も体も満足&満腹に。 酔い覚ましがてら立ち寄ったロビーの屋外テラスでは、初秋ながらも肩をすくめる冷気に身震い。おやすみ前のもうひと風呂、と意気投合し、館内の風呂へと向かう。
「白樺の湯」は、大きな内風呂と露天風呂がある大浴場で、時間帯による男女入れ替え制。闇夜であいにく、露天風呂からの眺めは楽しめなかったものの、しんと静まり返った森に涼やかな水音が響いていた。常連さんのお話では、夏にはホタルも舞い飛ぶのだという。
小鳥のさえずりで目覚めた朝。カーテンを少し開けると「鴫の谷地沼」越しに、雄大な層雲が、空の吐息のように漂っている。気配に気付き起き出してきた友人に「今日も、いい天気になりそう」と、声をかけ、朝のお風呂へと誘う。
朝靄の薄いベールのような湯煙が、射し込む朝陽にゆらゆらと漂うお風呂は、体がしゃきっと目覚める清々しさ。昨夜、景色のなかった露天風呂も、深まる秋の彩りをくっきりと湯面に映し出していた。
ブッフェスタイルでいただく朝食には、山形の山菜やお漬物、できたての目玉焼きなど、素朴ながらも体にやさしいメニューが並ぶ。食事後は、山に面したホテルの中庭を少しお散歩。白樺林の奥には小さな滝もあり、そのまま「鴫の谷地沼」に通じる散策路も伸びているようだった。
館内の大浴場同様、離れ湯も時間帯により男女入れ替えになると伺い、チェックアウト後はもう一度、お風呂へ寄り道。2つの岩風呂が段差で並ぶ露天風呂は、一方が屋根あり、もう一方が目隠し御免のオープンエア。ユニークなその造りに昨日、あれほど湯を堪能したことも忘れ、湯上りの足湯まで、とことん楽しみ尽くしてしまった。
静かな音楽を思わせる水と森。
深呼吸しながら歩く、鴫の谷地沼。
ホテルから歩いてすぐの場所にある「鴫の谷地沼」は、水芭蕉の群生でも知られる、人気の散策スポットだ。周囲約1.5キロメートルのコースは、ゆっくり歩いても1時間程度。沼の水は周囲の農業用水に使用されているため、温泉の流入がなく淡水。そのためミズナラをメインに、ウリハダカエデやイタヤカエデ、ミネカエデ、オオバクロモジなどの広葉樹が生い茂り、岩魚やヘラブナが生息する釣りのポイントにもなっている。
明るいブナの森を歩くと、時折ポトリ、ポトリと音を立てながら、空から“どんぐり”が降ってくる(笑)。道沿いには休憩用のベンチや東屋も設置され、スーラの絵画のような詩情あふれる水景が広がっていた。初秋とはいえ、黄金色に色付きはじめた草紅葉や、秋の陽射しに眩しいほどに輝くコマユミやガマズミの赤い実が、私たちの目を釘づけにする。
マザーツリーのようなミズナラの大樹を仰いだ後、小さな渓流を渡り、対岸に程近い場所にある「横倉瀧」(水芭蕉の群生地はここから100メートル程先)で、しばしの小休止。その先は、遠くに瀧山などの山群をのぞむ絶景ポイントがあった。このあたりからは、散策路が舗装された道路とつながり、さらに歩きやすい。やがて沼の対岸に「蔵王四季のホテル」の姿が現れた。水鏡に映るその外観は、緑のフリルドレスを凛とまとう貴婦人の姿さながら。まもなく迎える錦秋の季節は、どんなにきれいだろう。その景色に想いを馳せる。かつて営業していたらしいテニスコートのクラブハウス付近には、ギンドロの木に寄り添われ、蔵王ゆかりの歌人、斎藤茂吉の歌碑や彫刻家、佐藤助雄氏作の立像もあった。
山形蔵王が発祥とも言われる「ジンギスカン」。一説では、蔵王のジンギスカンはもともと、戦後、羊毛が暴落し、困窮する農家を羊肉料理で救うため始まったとされる。独特な山高の鉄板型は、モンゴルの鉄兜で焼く方法を参考に、当初、山形の鋳物工場に作らせて改良を重ねた後、全国に広まったものらしい。
歴史あるその味わいを確かめに、名店「ろばた」の暖簾をくぐる。この地で生業してもう40年近くだという店で扱うラム肉は、すべて生肉。味の決め手は、すりおろしたリンゴをたっぷり入れた自家製タレだ。鉄板で肉を焼肉のように焼いた後、タレにつけていただくのが蔵王流。私たちは「ジンギスカンセット」(1,500円 ご飯・味噌汁・お新香・ミニサラダ付)を注文。手切りならではの肉厚でジューシーなラム肉は、まさに噂どおりの絶品。店の女将さんの志田さんによれば、ジンギスカンは、肉のなかでも体脂肪を燃やすL−カルニチンが多く、低コレステロールのうえ、豊富な鉄分とビタミンB群の宝庫で、女性にうれしい肉料理(!)とのこと。「ホント、ここは私たちにやさしい温泉よね♪」と、私たちの食欲もついつい進んでしまった(笑)。
最後に寄った「蔵王大露天風呂」は、蔵王で昔から絶大な支持を誇る超人気風呂だ。建物は入浴料を支払う受付(大人450円)と休憩室がある小屋を挟んで、女性と男性に分かれている。自然の地形を活かし、ゲレンデ間の狭い沢筋につくられたこの露天風呂は、まさに秘湯。風呂は川の上流にある源泉から直接パイプで引湯され、段差によって、温度の違う二種類が楽しめるようになっている(掲載の借用写真は男性露天風呂)。旅の最後に相応しく、大自然に抱かれる心地が、どすんと味わえるワイルド温泉(笑)だった。
帰りは“山頂付近の紅葉”を楽しみながらの、蔵王エコーラインコース。温泉での、のんびり滞在がアダとなり、容赦なく薄暗さを増してゆく景色に焦りながらの強行軍。それでも、赤や黄色が繊細なパッチワークキルトのように、山肌を覆い尽くすハイライン付近の紅葉は、まさに言葉を失う大絶景!日没になんとか間に合ったお釜から山裾を見渡せば、水墨画のように重なり合う朝日連峰と大朝日岳の夕焼け。「あれ、始まりもこんな景色だったような…」と、つぶやく私に「また、戻って始めちゃう?」と、友人が悪戯っぽく笑う。おんな二人、懲りない珍道中は、なかなか終われないようだ(笑)。
■蔵王四季のホテル
大自然に囲まれた一軒宿を思わせる、寛ぎのリゾートホテル。客室および館内からは、ホタルも舞い飛ぶせせらぎや、白樺林、散歩コースとしても人気の鴫の谷地沼など、心安らぐ山景が広がる。肌にやさしい弱アルカリミネラル泉の2つの大浴場、露天風呂の他、蔵王の山並みを望む源泉掛け流しの独立湯棟「離れ湯 百八歩」など、計9つもの趣き異なる風呂が好評。“地産美味”をテーマに、地元食材による郷土料理が楽しめるお料理は、山形らしさ満載。
*フロントで共同浴場3ヶ所の無料入浴券を進呈
*系列宿の「おおみや旅館」「蔵王国際ホテル」の入浴も無料
・離れ湯 百八歩
ホテルから歩いて約1分の場所にある独立棟の湯小屋。ホテル宿泊者の他、系列ホテル利用者は無料で利用できる。(一般入浴 大人1名840円)モダンな外観と対照的に、館内は床から壁、梁に至るまで総木造のやさしい佇まい。蔵王連峰を望む、解放感あふれる風呂はすべてが源泉掛け流し。足湯の他、趣き異なる2つの内湯と露天風呂が楽しめる。
【泉質】
酸性・含硫黄−アルミニウム−硫酸塩・塩化物温泉(低張性酸性高温泉)
(近江屋源泉)
(近江屋2号源泉)
【効能】
効果効能 きりきず、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病、糖尿病、高血圧症、動脈硬化症
【泉温】
(分析時)52 ℃ (使用時)42℃ / pH値 1.8
【蔵王温泉入浴の注意点】
・泉質上、熱く感じるので必ずかけ湯をしてください。
・脂分が落ちやすいのであまりゴシゴシこすらない。
・温泉が目に入ると大変痛みます。
・飲泉は出来ません。
・酸性が強いので貴金属が黒く腐食します。アクセサリーは必ず外してください。
・衣類に温泉が付着すると傷みます。湯上がりには身体を良く拭いてください。
・泉質上、床や湯ぶちが滑りやすくなります。転倒注意。
住所/山形県山形市蔵王温泉1272
TEL/ 023-693-1211
チェックイン 14:00 チェックアウト 10:00
立ち寄り入浴/6:00〜23:00 入浴料金840円 *タオル210円 露天風呂あり
交通/山形自動車道・山形蔵王I.Cより西蔵王高原ラインで約30分
山形新幹線・山形駅から車で約30分
駐車場/50台
http://www.zao-shikinohotel.jp/
紅葉のスポットとしても知られる蔵王温泉街の南端にある静かな沼(標高 約820m)。周囲約1.5kmの水辺を巡る遊歩道には、4月上旬から5月上旬まで咲く水芭蕉の群生地もある。湖畔への車の乗り入れは禁止で、専用駐車場は湖畔まで徒歩約5分のところにある。
見頃は4月下旬から5月上旬。テニスコート側散策路付近および散策路に点在。
・水芭蕉
自生地はテニスコートのある散策路対岸に2ヶ所点在。4月下旬、雪解けとともに咲きはじめ、5月連休頃が見頃となる。
・レンゲツツジ
沼地周辺に自生しており、5月中旬頃、薄紅色の花が咲き誇る。
TEL/023-694-9328(蔵王温泉観光協会)
駐車場/100台
■ろばた
山形蔵王が発祥とされる、ジンギスカン料理の人気店。店内ではジンギスカンの他、県産食材にこだわった定食などのメニューも豊富。2006年に現在の地に移転リニューアル。1日限定3室の宿泊もでき、自家源泉掛け流しの貸切風呂と足湯などが楽しめる。
・ジンギスカン
ジンギスカンのルーツは諸説あるが、現在のジンギスカンのスタイルを作ったのは山形の鋳物文化と昭和初期の綿羊協会などの条件から蔵王温泉とされ、1959年に蔵王で開催された冬季国体によって全国に広まったという。サフォーク種の生ラム肉は、手切りのため肉厚。一般的なジンギスカンと異なり、ラム肉は焼いてからタレをつけて食べるスタイル。単品(1,200円)、セット(1,500円 ご飯・味噌汁・お新香・ミニサラダ付)、定食(1,700円 ご飯・味噌汁・お新香・小鉢三品付)。
住所/山形県山形市蔵王温泉710
TEL/023-694-9565
営業時間/11:00〜22:00
定休日/木曜日 ※1〜3月、8月、祝祭日は無休
駐車場/有
http://www.t023.com/~zao/
■蔵王大露天風呂
山形県内最大、大自然の地形をそのまま活かし一度に約200人が入浴できるという人気の源泉掛け流し入浴施設。露天風呂は4段あり、上流2段が女性用、下流2段が男性用。春から夏の森林浴や、秋の紅葉と大自然を感じながらの野趣あふれる温泉入浴が堪能できる。
住所/山形市蔵王温泉荒敷853-3
TEL/023-694-9417(蔵王温泉観光(株))
営業時間/6:00〜19:00(時季により変更あり)
※11月下旬〜4月中旬頃まで冬季閉鎖
入浴料金/ 大人450円 小人250円(満1歳以上12歳未満)
定休日/不定休
駐車場/60台
http://www.zao-spa.or.jp/cat_spa